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WPTCとは?

WPTCとは?
WPTCとは、2年に1度アメリカで開催されている製菓の国際コンクールです。いわば、お菓子のワールドカップ!
2008年度で4回目を迎え、フランス リヨンで隔年開催されている“クープ・ド・モンド ドゥ ラ パティスリー”と並び、世界のトップパティシエから近年注目を集めているコンクールです。



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WPTC2008チームJAPANメンバーは・・・


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WPTC大会の様子

WPTC2008を徹底分析   ---lesson 5・2---     2008年07月08日(火)

---lesson 5・2--- 
プティ・ガトー    


前回大会で味覚を担当した武藤シェフのガトーを、『本当に素晴らしいバランスだった』と賞される中島シェフ。
中島シェフは、WPTCとしての第1回大会に出場されたメンバーのお一人。これまでの大会をご自身の経験からチームJAPANをサポートされてきた中島シェフはどのようにプティガトーについて考えてらっしゃるのでしょうか。4つの質問に答えていただきました。



コンクール向けのプティガトーを考えるときに、一番はじめに考えるのはどんなところですか?素材ですか?組み立て方ですか?

『まず考えるのは、作る人 つまり自分が一番おいしいと思う組み合わせです。
組み合わせを考えるうえで大切なことは、もちろん自分のアイディアや感性といったものですが、伝統的な組み合わせを見聞することがアイディアを生み出すために大切なことだと思います。
古くからの組み合わせというものを見聞していくと、基本となる仕事の技術や味の組み立て方というものが見えてきます。こういったことがわかったうえで、自分を表現する組み合わせをつくり出せるようになりました。
また、コンクールという観点より考えると 審査員の五感を刺激するものを取り入れることが重要になります。
「目で見て」・「香りを感じて」・「口の中に入れたときのテクスチャー」でインパクトある組み合わせを作る。ほとんどに審査員がひと口程度しか食べない中で、そのひと口で何のお菓子かパッとわかるようにすることも重要なことです。』




チョコレートのプティガトーとフルーツのプティガトーを一緒に食べてもらわなくて
はならないとき、どのようなことに注意されますか?

『WPTCでは、3種のプティガトーを作りますが、個々の完成度も3つを食べたと時のバランス感、満足感も重要です。
チョコレートのプティガトーとフルーツのプティガトーに関してはそれぞれの特徴を生かしたものである必要があります。
甘みの差や酸味の差、塩分の入れ具合やテクスチャーの差をしっかりと出して、2つのガトーに特徴を持たせます。
チョコレートのプティガトーであれば、甘みはそれほど強調せず、ガナッシュ、生地、クリームやムース、食感を表現するものなどそれぞれの食感のバランスを生かします。前回の武藤シェフがつくったチョコレートのプティガトーなどはその食感を持って完璧に特徴を表現したプティガトーでした。
また、“チョコレート”とひとくくりにしていますが、1種類のものだけで構成するもの、パーセンテージの違うチョコレートを使い分けたり、ブレンドしたりすることでさまざまなお菓子を構成することが可能になります。
フルーツのプティガトーの場合は、フルーツの味やうまみを強調するために甘さをしっかり付けます。それだけではなく、テーマとなるフルーツは1種にします。ただ、1種類のフルーツのみで構成するのではなく、主体となるフルーツの味を引き立てる素材をブレンドするようにするのです。たとえば、マンゴーのムースを作るときはパパイヤやレモンで味を加えることでより、マンゴーがマンゴーらしく引きたちます。バナナならアボガドを少し加えてみたり。イチゴなら、フランボワーズやフレーズデボアを合わせたり。
この組み合わせ、引き立てるために加えるものを決めるのは、経験や見聞の中から生まれてきます。中でも基本となる考え方としては、「赤い実には赤い実のもの」、「トロピカルフルーツにはトロピカルフルーツを」「エキゾチックなものにはエキゾチックなものを」と共通点のあるものを合わせてやること。
さらに、私ならフルーツのプティガトーには余計な食感は組み込まないようにしますね。
こうすることで、チョコレートのプティガトーと同じタイミングに食べる審査員にもしっかりと違いをアピールすることができるでしょう。それだけではなく、どちらも印象付けることができるのではないでしょうか。』




プティガトーに食感を与える時、どのような構成から考えますか?ムースを主にして、ビスキュイを考えますか?ビスキュイを主にして、ムースその他を考えますか?
『それは、ケーキによってさまざまではあるのですが、まずは何をおいしいと感じてもらうお菓子にしたいかということ。次に食べる人にそう感じてもらうための構成を考えていきます。
先ほどもお話ししたように、例えばチョコレートのガトーであれば生地・ガナッシュ・クリーム・ムース・シャンティイショコラ・クルスティアンなどさまざまな食感のパーツがありますが、下から食感の重たいものを組み立てていくのが基本となるでしょう。フルーツのガトーであれば、フルーツの香りやうまみを出すためのムースやクリームを使用することを決定した後に、生地を合わせるか パートシュクレ等を合わせるかを考えていきます。
こうしてパーツをチョイスしていくときに気をつけた方がよいことは、コンクールの場合は特に 審査員がフォークでガトーをひと口分すくいあげるということ。 そのひと口でガトーのおいしさを伝えることが出来る構成にすることは必須です。また、ひと口をすくいあげにくかったり、そのあとの断面が汚くなってしまったりということでストレスを与えないようにすること。シュクレなどを使うときには、特に気をつけることが必要です。食感を強調するために底に堅い生地を持ってきたガトーの場合、フォークを入れたときにお皿にあたったフォークが「カツン」と音を出してしまうこともストレスのひとつになるので気をつけたいものです。シュクレ生地であってもほろっと崩れるようなものを合わせたり、ムースなどから染み出る水分量で審査員が食べるタイミングには適度に水分を含んだ状態になるように調整したりというところまで気をつけることも必要です。』




世界を意識するプティガトーを作るとき、日本のお客様向けに作るときと比べて、大きく違う点はありますか?
『WPTCなど世界のコンクールでは、やはり世界的な基準があると思います。さまざまな国のパティシエ・審査員がいる中で、基準とされるのはフランスのお菓子になるのではないでしょうか。甘みの基準などは、日本では少し甘みが強いと感じられるものでもフランスではスタンダードだったりします。また、ひと口でそのケーキはどういうものかを伝えることができる味のインパクトが必要です。ハーブや胡椒、塩の利かせ方や、キャラメルの焦がし具合など、フランスのお菓子や世界のトップレベルのお菓子を食べることによって、自分で世界の基準を感じてみます。そのガトーの素材の活かし方はどのようにされているかを研究します。
ホテルニューオータニ内にある“パティスリーSATSUKI” には、日本素材を使ったケーキを多く並べています。ホテルという環境柄 海外からのお客様をお迎えするお店の中で、日本の素材を使ったガトーを提供することで日本の食文化を知っていただくきっかけにもなっています。しかし、コンクールにおいては日本の素材を使ったとき審査員がその素材が何かわからなければ、評価としては下がってしまいます。現段階で世界のコンクールでも通用し得る和素材はお茶・抹茶くらいなのではないでしょうか。』





最後に、これからコンクールに挑戦しようとされているパティシエの方に向けて メッセージをいただきました。
『以前、ピエールエルメ氏から聞いたことですが「お菓子を作る事は”味の建造物を構築する事である”」と。基礎となる地盤をしっかり作り、そして柱となる味の組み立てを構築する。必要としない物は勇気を持つてとり除いて行くという考え方を意識してお菓子つくりをするとデザインもシンプルで味の構築も上手くいく場合が多くあります。
味の組み立てをする中で、重要なのはやはり“基本である”とエルメ氏もおっしゃっていました。あれだけの独自の組み合わせを表現していく彼がもっとも大切にしているものが伝統や古くのレシピや技術であること。自分のアイディアや感性がもちろん大切ではあるけれど、基本が大切であることが彼を見ていると良くわかります。
これからコンクールを目指している方に古くの文献を読むこと、基本の技術ができること、そして世界トップレベルのお菓子をたくさん食べて、どのようにそのお菓子が表現されているか、どうすればその素材の良さを引き出すことができるかを研究していっていただきたいですね。』






解説:WPTCJAPANオフィス ホテルニューオータニ 中島氏
文:WPTCJAPANオフィス 上村氏 
編集:株式会社アニー 山田









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Posted at 11:28 | '08 WPTC2008とは? | この記事のURL

WPTC2008を徹底分析   ---lesson 5・1---     2008年07月07日(月)

---lesson 5・1---  
プティ・ガトー


プティガトーは下記のとおり作らなくてはなりません。
-----------------------------------------------------------------------
A. 各チームは下記事項に沿って、3種類のプティガトーを製作しなくてはならない。
・フルーツのプティガトー1種類
・チョコレートのプティガトー1種類
・残りの1種類は自由

B. 各チームは各13個、合計39個のプティガトーを下記のように仕込むこと。
・ 各プティガトーは5個ずつ、計15個をブッフェ台に乗せるためにパスティヤージュ製トレイの上に盛り付けられなければならない。(ルール11条パスティヤージュ・トレイを参照) パスティヤージュ・トレイは仕事/芸術性の審査員によって、別に審査される。
・ 各6個、計18個のプティガトーは試食用として準備される。
・ 各種類1個ずつ(合計3個)は6枚の小さなトレイにそれぞれ置き、6人の試食担当
の審査員がそれぞれ1枚ずつ受け取る。(つまり、6枚のトレイに3つずつなので、合計18個)
・ 各1個のプティガトーはディスプレイトレーに置き、主催者のバックアップ用として取っておく。
・ 各1個のプティガトーは写真用とする。

C. プティガトーの形は選手の自由選択とする

D. プティガトーの大きさは80〜100グラムに収まるものとする。
-----------------------------------------------------------------------


WPTCにはチョコレートのアントルメもチョコレートのプティガトーもあって、何が違うのだろう、と思われるかもしれません。
単純なところでは、アントルメの場合は必ずカットされなくてはいけませんし、またアントルメだけを食べます。プティガトーの場合、アントルメは3種類が同じお皿に乗せられて、そのまま審査員に運ばれます。だから、プティガトーの場合は3つを順番に食べたときにちょうど良い構成になっている必要があります。
これはあくまで個人的な考え方ですが、アントルメの場合には一つを食べたときにチョコレートと、それ以外の素材が、それぞれがしっかりと主張し、かつ絶妙なマリアージュを見せなくてはいけません。それに対して、WPTCのプティガトーは、ひとつひとつのプティガトーがチョコレート、フルーツ、その他をしっかりと主張し、そして3つ食べたときにちょうど良い満足感を得られることが必要です。

さらに、チョコレートのプティガトーであればチョコレートがしっかりと主張されるべきで、その他の素材はあくまでチョコレートを引き立てる役割であるべきです。フルーツのプティガトーはあくまでフルーツが前面に出て、その他の素材は引き立て役になるべきです。









たとえば、前回日本チームが作ったチョコレートのプティガトー(”OROCHI”)はチョコレートのサブレ、板チョコ、チョコレートのムース、ガナッシュというとてもシンプルな構成です。これ以上ないくらいシンプルな構成です。使っているチョコレートも66%のもの1種類。基本は同じ味ですが、生クリームの増減や食感の違いだけでアクセントを生み出しています。まさにチョコレートを味わってもらうためのプティガトーです。これだけシンプルになると、配合が1g単位で違うだけで出来上がりがガラッと変わってきます。もちろん、配合以上に大切なことは作り方で、実はここで使われているガナッシュの配合は55%のショコラノワール1に対して、35%の生クリーム1という基本の配合です。それを66%で計算しなおしただけで、特殊なレシピを生み出して、チョコレートの味を深めたというわけではありません。基本の仕事を組み合わせることで、新しいお菓子を作り上げるという、パティシエの仕事の真髄を見るような気がします。

アントルメはカットしなくてはいけない、という話を最初にしましたが、これも実は大きな意味があります。アントルメは審査員がカットしやすい構成になっていなくてはならないということは、その構成には何らかの制限は出てくるわけです。その制限がプティガトーではまったくありません。たとえば、前回のチョコレートのプティガトーはサブレとチョコレートの板をチョコレートのクリームとムースで重ねただけですが、これは食べるために崩すような感じでカットしていくことは可能ですが、包丁できれいに8等分にすることは不可能です。つまり、アントルメでは再現できない面白い構成を考えることができるのです。たとえば、ケーキの表面に大きな穴をあけて、その中にゆるいソースを流しておくとか、カットできないくらい柔らかいサブレ生地を使うとか。デザートほどではないにしても、自由な発想でケーキをデザインすることができます。

味覚の点でいえば、基本的にはアントルメで書いたことはそのまま当てはまると思います。どこか違うのかというところでも書きましたが、NYのMOF ジャック・トレスさんに言われたことを流用すると
 1.2-3種類のシンプルな味の組み合わせ
 2.素材の味をしっかりと出すこと。
 3.適度な食感を与えること。

前回のフルーツのプティガトーはカシスの風味を前面に押し出したもの(”SHIBI”)ですが、酸味の強いカシスをバヴァロワとイタリアンメレンゲでうまくバランスがとられていました。
本番でこのプティガトーを試食した加藤代表は『いつもの練習のときには冷蔵庫に入っていたのを食べてたんだけど、今回は仕上がったものがすぐに出てきたから、周りのイタメレが常温でほわっと口で溶けて、次に中のムースがあって、最後にサクッとしたシュトロイゼルがきて、うまいんだよ!これはいった!と思ったよ。』と興奮気味に話していました。
加藤さんの隣にいたMOFローラン・ル・ダニエルさんも、敵ながらあっぱれ、と思ったのか、一口食べてこちらに向けて親指を立てていました。温度差をつけたプティガトーというのも、店売りでは出来ない、コンクールだから出来る作品だと言えます。

フルーツのプティガトーについては、もう一つポイントがあって、WPTCで最も気をつけなくてはいけないのが素材の選び方で、アメリカで行う大会に出場する際に、日本で使っている新鮮なフルーツを使うことはできないことを肝に命じなくてはいけません。確かにアメリカで食べるイチゴやモモはおいしいですが、でも日本のものとは全く違うので、それを想定したレシピを作ることができません。1gの違いがおいしさを分ける大会においてこれは致命的です。ですから、武藤さんはフレッシュのフルーツを一切使わないで、フルーツのプティガトーを作ることにこだわりました。ムース、イタメレ、バヴァロワなど、すべて珍しい素材や新しい技術は一切使っていませんが、しかしながら、これほどカシスの味が嫌みなく前面に押し出されているお菓子は食べたことがありませんでした。

ちなみに、もう一つのプティガトー(”YAMABUKI”)はヘーゼルナッツ、オレンジ、ミルクチョコレートの組み合わせです。これもすべての素材がしっかりと主張され、かつ素晴らしいマリアージュを実現したプティガトーです。フルーツでもチョコレートでもない分野でなくてはならないと考えると、文句のつけようのない構成でした。

プティガトー全体を改めて考えると、やはり本当に1g単位の細かい配合の違いがお菓子の出来を左右するのだなと実感します。フルーツのプティガトーを試食したときに、武藤さんが「10gだけ砂糖を増やした」と言われたものが、その前の時よりもずっとフルーツの味とフレッシュ感がましていたときに、とても驚いたことが記憶に残っています。フルーツの味を前面に出すときに、砂糖を減らすのではなく、増やしたのです。お菓子作りの本質を感じます。

武藤さんが作った3種類のプティガトーは、チョコレート、フルーツ、その他、の順番で食べる時に、全く無理なくすべてを食べ終えることができます。シンプルで味の強いチョコレートのお菓子を食べても、全く負けることのないフルーツのお菓子、そして、最後にまったりと味わえるもう一つのお菓子。この3種類のプティガトーはフランスを打ち負かし、見事第1位を獲得しています。
▲前回のチームJAPANのレシピはこちら。



ジャックとNYで話したときに「シンプルで、しっかりした味で、適度な食感を出せ」と言った時に、正直「それで勝てたら苦労しないよ」と思ったのですが、でも その3つを完全に突き詰めた武藤さんのお菓子を実際に味わい、そしてそれが世界1位を獲得したときに、パティシエの仕事とはいつも使っている素材を使って、その素材感をさらに突き詰めて新しい味を生み出すことなのではないか、と思い到りました。


次回 lesson 5・2 では、WPTCオフィスメンバーでホテルニューオータニ シェフパティシエ 中島氏にプティガトーについてお話を伺います。
ご自身のWPTCをはじめコンクールでの経験を踏まえた、中島氏のお話も必見です。






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Posted at 11:24 | '08 WPTC2008とは? | この記事のURL

WPTC2008を徹底分析   ---lesson4・2---     2008年06月13日(金)

---lesson4・2---
アントルメ・グラッセ


それでは、早速 WPTC2006でチームJAPAN の味覚部門をメインでご担当された武藤シェフに前回大会でのアントルメグラッセについてお話を伺っていきましょう。


アントルメ・グラッセを作る際に最初に考えることは?前回のアントルメ・グラッセの場合は、アイス・シャーベット・その他のうち、どのパーツから考えて、アイデアを広げましたか?
『まず、“テーマ性に沿ったもの”ということです。前回大会のテーマは「陰・陽」でしたのでアジアンな雰囲気を出したいなと思って、ライチをを使うことを一番初めに決めましたね。ライチをベースに何を合わせるかを考えたときに、前回NPTCを見にアメリカに行った季節はちょうど桃が旬でおいしかったんですよ。それで、ペッシュ・ド・ヴィーニュを合わせることにしたんです。最後にあわせる素材として決めたのが、アーモンド。今までの経験上、種子ものには種子ものを合わせると落ち着く(相性が良い)って言う持論があったので自然とアーモンドを合わせることに決まりましたね。さらに、フランボワーズのゼリーを合わせて・・・ フランボワーズをここに合わせることで、味に切れが出てくるんですよ。全体的にぼやけない、それぞれの味を引き出してくれました。』


普通のアイスクリームやシャーベットを作る場合と、アントルメ・グラッセ用に作る場合とでレシピにどのような違いがありますか?
『これは一概にはいえないですね。普通のアイスクリームやシャーベットは、それぞれのものひとつを食べておいしければそれでいいですよね。ですが、WPTCの規定にあるアントルメ・グラッセは、アイスクリームもシャーベットも機械を回したものではない冷菓(武藤シェフのアントルメグラッセではムース・グラッセでした。)も生地も・・・全てを合わせておいしく感じられるものにしなければなりませんよね。ひとつひとつを食べておいしいものを合わせても、アントルメグラッセとしてはおいしいものではないんですよ。素材同士の「味のバランス」・「量」・「口どけ」・「食感」、これら全てのバランスがベストでなければおいしいものではないんです。また、例えばアーモンドの味をもっと出したいと思ったときに、味を濃くするのがベストなのか、量を増やせばいいのか、それには様々な手段があるんですよ。安定剤の量だったりもそのひとつです。 アントルメ・グラッセを作るには、本当に様々な手段を選択しながら、おいしいバランスを見つけだしていかなければなりません。自分の今までの経験から手探りでそのポイントを見つけ出す中では、予期せぬ失敗もありましたし、また反対においしいポイントへの手ががりを発見することもありました。 実際、1g単位で様々 微調整しながらレシピを作っていきましたね。』



もっとも美味しい状態で試食をしてもらうために、冷凍庫から出した状態のアントルメ・グラッセはどのように温度を調節しましたか?
『それには形もポイントになってきますね。 審査員に試食を出すときに、カットするのですが、規定にもあるように最低8個に切り分けられなくてはならないんです。その、8カットにしたときに、審査員が食べるはじめのひと口をおいしいものにしなきゃいけない。そのひと口めをどれだけいい状態で出せるかが重要です。食べてもらうときのおいしい温度帯を見つけることが、まず一番はじめの仕事です。 

前回は、いろいろと調整した結果、−11度〜−12度が一番いい状態。
つまり、おいしく感じる温度でしたね。 
その温度に調整することが次の仕事です。 前回の場合はグラサージュヌートルをかけて仕上げた状態で発泡スチロールのケースに入れました。こうすることで、ゆっくりと温度を上げていくことができるんです。ゆっくり温度を上げていくことで全体を均一に解凍をすることが出来ます。 前回はドームの形で作りましたが、急に解凍されてしまうと、中心部分だけ硬い状態のままになってしまいますよね。審査員の方には8カットしたものが運ばれます。このとき、中心部分を初めのひと口として食べるわけですから、こういった状態では審査員においしいと感じてもらうことはできません。 また、ゆっくり解凍するのであれば、冷蔵庫でもいいのかも知れませんが、大会の場合は冷蔵庫の開け閉めも頻繁になるので、庫内温度が安定せず、温度調整も安定しないですからね。』



安定剤の使い方について、注意点はありますか?
『アントルメ・グラッセを作るとき弾力性や、保型性、常型性というものも大切な要素です。先ほども少し触れましたが 出したい味の調整にも安定剤の量が関係してきます。合わせるものによって、量によって安定剤の量を調整します。
安定剤を増やすことによってなめらかな口どけに出きたり、弾力性を出したり、粘質性をだしたりできます。安定剤を増やすと、保型性が出るため冷却・攪拌している間に空気を含みます。その分同じ量を合わせたときの味が出にくくなってしまうのですが。
また、これらは安定剤だけによって調整できるものではなく、糖度と安定剤の加減が影響してくるのです。味をしっかり出したいときには、糖度をしっかりつけてやることが必要です。前回、アントルメ・グラッセを作ったときにはアーモンドの味をしっかりと出したかったので、入れられる最大の量の砂糖を入れて糖度をしっかりつけました。それで、ズバッとアーモンドの味を出すことが出来たんですよ。糖度をあげることで、味を強調することもでき、さらになめらかさや粘性もだせるので、より味を感じやすくなるんです。 アントルメグラッセをどういう風に食べさせたいか。どういう味の順番に感じてもらいたいかを考えて、糖度や安定剤の量の微調整をしなくてはいけません。
どんな安定剤を選ぶかもポイントですね。私の場合はいつも使い慣れているもの1種類で全てを作りましたが。 
そして、糖度や安定剤で味やなめらかさ、弾力性のバランスを見つけたら、おいしい温度も変わってしまうのでこちらも調整が必要になります。他のお菓子も同様ですが、中でもアントルメ・グラッセはおいしい状態のものを作りあげるためには本当に様々な要素がそこにあります。 こうして言葉で説明しきれないくらいに・・・ 
私は前回大会で作ったアントルメ・グラッセを完成させるまでに、半年近くかかったのですから。』



武藤シェフは試作を重ねる中で、毎回 その味をチェックしていた加藤代表に糖度の少しの変化に気づき、「なめらかさがよくなった」と声をかけられたことが印象的だったのだそう。


1gの微調整をしながらの試作で、その変化にいち早く気づく加藤代表の味覚の正確性・・・
加藤代表は第1回目のWPTCから続けて味覚の審査をしてきた方です。 審査員の味覚の正確性・緻密性は全く特筆すべき事だと感じます。

とはいえ、武藤シェフが作ったアントルメ・グラッセは、おそらく、万人が食べたときにその多くの人が頭で考えることなく素直においしいと感じるものと言うことが出来るでしょう。本当のおいしさを伝えるとき、説明や理屈は必要ないということを実感したことを記憶しています。
WPTCでの味覚の審査は大変シビアなものでもあるのですが、大会用、審査員用というだけにとどまらない 本当のおいしさの追求なのではないでしょうか。
今大会において、味覚部分を担当される和泉シェフも 現在試作を重ねています。
様々な選択をしながら、どのようなものを作り上げていくのか・・・チームJAPANの作品に世界中のトップパティシエたちが注目していることでしょう。




解説:WPTCJAPANオフィス ザ・リッツ・カールトン東京 武藤修司氏
文:WPTCJAPANオフィス 上村氏 
編集:株式会社アニー 山田






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Posted at 10:00 | '08 WPTC2008とは? | この記事のURL

WPTC2008を徹底分析   ---lesson4・1---     2008年06月12日(木)

---lesson4・1---    
アントルメ・グラッセ


アントルメ・グラッセのルールは下記のとおりです。

----------------------------------------------------------
アントルメ・グラッセのルール
A.各チームは1種類2台の冷菓を、1つは試食用、1つは写真用、残りは予備として、作らなくてはならない。主催者側は、冷菓アントルメ用としてケーキスタンドを提供する。

B.各チームは下記のような構成をすべて含んだ冷菓を製作しなくてはならない。
  ・アイスクリーム
  ・シャーベット     
  ・機械を回したものではない、冷菓(冷凍のパルフェなど)
  ・パティスリーと認められるもの(メレンゲ、スポンジ、ビスキュイなど)

C.焼き物を含むすべてのアントルメ・グラッセを構成するものはすべて原料の状態から、審査員の面前で作られなくてはならない。

D.各アントルメ・グラッセは最低8個に切り分けられなくてはならない。冷菓の形は、そのサイズが9インチ(23センチ)の円に収まるのであれば、参加者側の選択に任される。アントルメ・グラッセには重量制限はない。
----------------------------------------------------------


アントルメ・グラッセの定義というのはなかなか難しいのですが、常温ではなく冷たい状態で食べるケーキというといいのかもしれません。「冷たい状態でいいなら、普通のケーキを凍らせてもいいのでは?」という疑問もあるかもしれませんが、もちろんそんなことはありません。例えば、イチゴのショートケーキを凍らせると、冷凍庫から出したばかりだとイチゴはがりがりだし、生クリームも味がしないし、少し温まってくると、イチゴも生クリームも離水してしまいます。つまり、冷たい状態で食べるケーキを作るというのは、さまざまな点で注意が必要になってくるのです。


冷たい状態で食べるのであれば、もちろんアイスクリームやシャーベットが主体となります。どちらも日本語で「氷菓」という言い方をされますが、アイスクリームはレシピに卵が使われているもの、シャーベットは使われていないもの、と言えます。
「氷菓」という分野はフランスではMOFの「グラシエ部門」があるほど、確立された分野で、そのレシピ作りには一般的なお菓子作り以上の計算が必要になります。アイスやシャーベットの滑らかさは砂糖の効果で、もし十分な糖分が含まれていないと、がりがりした食感になってしまいます。中にフルーツなどを入れようとしても、生のまま入れたのでは、凍らせた状態では硬くて食べられないし、それが少し戻ってくると離水してしまいます。フルーツをアイスに合わせるときには、必ず糖度の高いシロップか、氷点が低いアルコールにつける必要が出てきます。


たまに和食屋さんでデザートに出されるシャーベットが、口解けの悪い状態だったりすることがありますが、それは甘さを控えるために砂糖を減らしているからだったりします。滑らかな口解けのアイスやシャーベットを作るためには、しっかりした糖分の計算が必要になります。その説明をするとかなり長くなるのでここでは割愛しますが、糖分の計算に加えて、安定剤を上手に使うことで、さらに滑らかなアイスを作ることが出来るようになります。


アイス単体を食べるレシピであれば、もともとの「種」の配合がしっかりしていれば美味しく作れるのですが、アントルメ・グラッセを作ることは、アイス単体を作るよりもさらに複雑になります。特にWPTCの場合、アイスクリームとシャーベットとその他のものを必ずあわせなければいけません。味の面でそれらをあわせることも大変ですが、それ以上にそれら3つをあわせて、すべてを滑らかに食べてもらう状態に合わせることも大変なのです。冷凍庫から出したままだと全体がカチカチですから、少し戻してからサーブすることになりますが、温度の戻し方が悪いと、表面だけやわらかくて、中がカチカチと言うことにもなりかねません。冷凍庫と冷蔵庫をうまく使って、試食の時間にちょうど良い温度になるように調整することは、冷蔵庫で解凍しておけるアントルメやプティガトーに対するアプローチとはまったく異なります。


もちろん、全体を滑らかにするためには単純に温度管理だけではなくて、アイスとシャーベットそれぞれが同じ温度で食べて滑らかになるような配合に調整しなくてはなりませんし、全体が均一に解凍されるような型を使う必要も出てきます。アントルメ・グラッセにドーム型やブッシュの型が多く使われるのは、普通のセルクルなどを使って、角になった部分が先に解けてしまったりすることを防ぐ理由があります。







味の点でも、冷たい分、常温で味わうアントルメやプティガトーとはまったく違う構成で考える必要が出てきます。WPTCの場合、アントルメやプティガトーとは違って、フルーツやチョコレートなどを使うことの指定がないので、幅もかなり広く、各国かなりバラエティーに富んだレシピを作ってきます。


前回の日本チームはアーモンドのアイスクリーム、ペッシュ・ド・ヴィーニュのシャーベット、ライチのムース・グラッセに加えて、フランボワーズのゼリーもアクセントで加えられました。しっかりしたアーモンドのアイスクリームにその他のフルーツの味が見事に調和したすばらしい構成でした。アントルメ・グラッセもフランスに次いで2位を獲得しています。


























次回はWPTC2006でチームJAPAN の味覚部門をメインでご担当された武藤シェフに前回大会でのアントルメグラッセについてお話を伺っていきます。










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Posted at 10:00 | '08 WPTC2008とは? | この記事のURL

WPTC2008を徹底分析   ---lesson3---     2008年05月27日(火)

---lesson3---
アントルメ 


WPTCではチョコレートのアントルメを一種類作ります。

----------------------------------------------------------
アントルメ・ルール
A. 各チームは1種類3台のアントルメを製作しなくてはならない:1台はあめ細工のピエスの中に組み込み、1台は試食用に、もう1台は予備/展示/写真用として準備する。なお、主催者側は、試食用と予備のアントルメ用に、2台のケーキスタンドを提供する。

B. 各チームのアントルメはカットされた際にその断面のうち50%を超えない程度にチョコレートが使用されていなくてはならない。

C. 各アントルメは最低8個に切り分けられなくてはならない。アントルメの形は、その重量が1000〜1200gに収まっていれば、参加者側の選択に任される。

D. 焼き物を含むすべてのアントルメを構成するものはすべて原料の状態から、審査員の面前で作られなくてはならない。
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断面の50%がチョコレートであるというのはとてもあいまいなルールですが、言い方を変えれば「アントルメを食べたときにチョコレートの味が半分、その他の素材の味が半分、両方のバランスよいマリアージュを表現しなさい」ということだと思います。

あるパティシエの方が「フランス菓子とは A+B=C である。」とおっしゃったのを聞いて、とても感銘を受けた覚えがあります。

たとえば、和菓子・和食の場合、ある素材を主となる素材に加えることは、主となる素材を引き立てることを意味します。「マリアージュ」という言葉を使うこと自体、フランス料理・菓子でなければ耳にしません。(「チョコレートとオレンジのウエディング」という表現は聞いたことがありません。)
チョコレートとまったく違う素材をあわせて、ひとつのアントルメを構成することは、現代のパティシエにとってもっとも大切に考えなくてはならないことのひとつであることに違いありません。

チョコレートと副素材の「マリアージュ」を追及するパティシエたちの要望にこたえて、今ではひとつのチョコレートメーカーが同じ70%のダークチョコレートでも数種類のラインナップをそろえ、パティシエが好みに応じてチョコレートを使い分ける、そんな時代になりました。このことは今では当然に思えますが、20年前にはそこまで深く追求した方はいなかったのではないでしょうか。




具体的に今の流行について触れると
-ビターチョコレートのムースが主となる。
-チョコレートとあわさりやすい素材をセンターに使う。
-構成の半分弱がビスキュイである。
-適度にクランチーな食感を加える。
-アントルメにナイフやフォークを入れたときに、ストレスなく、まったく崩れずにカットできる 構成であること。
-仕上げは審査員がカットしやすいようにシンプルにするか、または飾りを取り外ししやすいようにしておく。また、オレンジ風味なのにイチゴを飾ったりするようなことは絶対にしないこと。
などが挙げられます。

チョコレートムースには沢山の種類があって、ガナッシュベース・メレンゲベース・アングレーズベース・パータボンブベース・クレームパティシエールベースなど、挙げるとキリがありません。その中でも今は軽すぎず、重すぎずといった感じのアングレーズベースのチョコレートムースがはやっているように思われます。(ちょっと前はチョコレートの味を前面に出すために、卵の入らないタイプがはやっていた気がします。)
一番やってはいけないことは、ホワイトチョコレートを使ったムースを主とすることです。ホワイトチョコレートにはカカオの固形分はまったくなく、カカオバターしか入っていませんから、「チョコレートの風味」はまったくしないので、「チョコレートのアントルメ」というテーマにおいて、ルールを無視していると思われても仕方ないはずです。






























▲複雑に見えますが、層をうすくすることで冷やし固める時間を短縮する工夫をした作品。





チョコレートに合わさりやすい素材というのは、フランス人パティシエにとっては「当然」のような組み合わせがあります。例えばオレンジ、カラメル、ヘーゼルナッツなどがありますが、実は私たち日本人にとっては、そのような「当然」という感覚がないことが一番のネックだったりします。(「王道の組み合わせ」という言い方もしますね。)例えば、外国の方が温かいご飯に牛乳と砂糖をあわせて食べる、というと日本人にとっては受け入れられないことであるように、世界大会でアジア系のパティシエが、フランス人・その他欧米のシェフにとっては受け入れられない素材の組み合わせ方をしてしまうことは多々あるようです。もちろん、WPTCやクープドモンドのような大会は世界中から集まったシェフが審査員を勤めるのでフランス人の味覚に合わせることは絶対ではないのですが、世界中の人々が食べて納得する味を作るというのはとても難しく、それだけに近年 コンクール向けにアドバイスを行う多くのシェフたちは「すべての人たちが受け入れられるような素材の組み合わせを考えなさい。」と言います。

実際に2002年大会に出場し、昨年のNPTCでは審査員を務めた喜島シェフは、ご自身の選手と審査員と言う2つの立場から“アントルメ”をどうとらえられているのでしょう。


『ご自分がチョコレートのアントルメを作るときに最初に考えることは何ですか?』
−コンクールにおいては、まず最初に「強み」を考えます。「強み」とはそのコンクールなどにおいての戦略的なもので自分は何で勝負しようかというポイントです。何か他の作品との差別化できる部分を大事に考えていきます。差別化といってもいろいろあると思います。一番良いのは誰もが食べたことないすばらしい味で見たこともないデザイン・・・しかし、今の時代そういったものはなかなか生まれないと思って良いと思います。
ですから「今、大きな流行があるから大半の作品はそっちにひっぱられるだろうから流れに背いていこう」といったことも立派な戦略だと思っています。
この明確な戦略が無ければ多少おいしいものを作ってもインパクトに欠けるものとなってしまうことをわかっている人は意外に少ないものです。
そして、決めた戦略に沿って、前記にあったような「A+B=C」 にするのか「Aの後をBが追っかける」のか、その際に舌に味を残すのか香りを鼻に抜くのか・・・と思考錯誤が始まります。



『コンクール向けと一般的に販売するアントルメの違いはありますか?』
−まず大きな違いは食べてもらう量の違いです。お客様に販売する場合はケーキ1個分ぐらい食べていただけるというのが前提になると思いますが、コンクールにおいて審査員が口にするのは1口か2口。せいぜいケーキ1/3個分でしょう。ですから、味の強さが難しい問題になってきます。
昔はコンクールにおいては「1口しか食べないから強めの味に」ということが言われていました。もちろん今でも多少はそれもありますが、あまり強すぎる味にすると「味が強すぎる」といった判断になり危険です。国際コンクールになるともちろんいろいろな国の審査員がいるわけで、味覚も本当に違います。ここでもどう感じてもらうかという「戦略」が大切になると思います。
もうひとつ、経時変化(時間が経つ事によって状態が変わること)についてはある意味、店で売る商品のほうが難しいかもしれません。例えば、ビスキュイにナッツを散りばめて焼き上げて香ばしさを出し、アントルメに組み込んだとしましょう。冷蔵庫やショーケースの中で時間が経過すると他の水分で「香ばしさ」という面は薄れていきますが、コンクールでは試食時間に合わせてある程度「香ばしさ」の加減をコントロールすることができます。硬さについても自分の管理下にある時間が長いので不必要に硬くして触感を犠牲にすることもありません。
もちろんこの時間に合わせてコントロールすることが恐ろしく大変な事は言うまでもありませんが・・・



『チョコレートとあわせる素材で、今お勧めの素材はありますか?』
−特にこれといって現時点で具体的な素材が頭にあるわけではありませんが、イメージで言うとリズム良く順番に口から消えていきながら、何か鼻からぬける香りがそれに調和するみたいな感じです。


『これからコンクールに参加するパティシエたちがチョコレートのアントルメを作る際にもっとも気をつけなくてはならないことはなんですか?』

−先ほどもお話しましたが、まず「明確な戦略が無ければ多少おいしいものを作ってもインパクトに欠けるものとなってしまう。」ということを意識することです。
それと最近審査をして改めて感じた事は、高いレベルの争いで他の作品と比較される時
ちょっとしたバランスの悪さや温度が命取りになるので完成形を極力忠実に再現する意識
をもっと大切にすることですね。特にチョコレートのアントルメは、バランスが崩れると
甘すぎると感じやすい非常にデリケートなケーキです。
昨年のNPTCの試食審査時も「ここ失敗したな」とか、「注意してないな、もっと温
度に気を付ければ点数が上がるのに・・・」という場面がかなりありました。





前回の日本チームの作品は72%のとても個性の強いチョコレートのムースを基本として、カラメルクリームとシナモン風味のダコワーズをあわせ、そこにバランスを取るためにミルクチョコレートのクリームが加えられています。
個人的には、最初に試食をした後に使われたビターチョコレートがとても個性が強いものであることを聞いて、とても驚きました。4−5種類の素材が無理なく合わさり、そして、注意深く食べるとそれぞれの味もしっかりと理解できるというのは、この種のアントルメの理想だったように思います。事実、武藤シェフが作ったアントルメはフランスチームに勝る得点を獲得しました。MOFに勝利した、すばらしい快挙でした。










今大会、チームJAPAN の作品が意識されることは必至です。
残念ながら、今大会にチームフランスは出場しませんが、チームUSAとして2002年大会でチームアメリカを優勝に導いたローラン・ブランラール氏とMOFの称号を持つステファン トレアン氏の2人のフランス人がエントリーしています。
チョコレートの扱いに歴史の深いべルギーやイタリア、スイスの王道の組み合わせの感覚や、アジア系のパティシエが提案してくる組み合わせからなるアントルメは見逃すことが出来ません。




解説:WPTCJAPANオフィス コンラッド東京 喜島立也氏
文:WPTCJAPANオフィス 上村氏 
編集:株式会社アニー 山田




Posted at 18:47 | '08 WPTC2008とは? | この記事のURL

WPTC2008を徹底分析   ---lesson2・2---     2008年05月16日(金)

---lesson2・2---
ボンボンショコラ


前回はWPTCの”チョコレート・ボンボン”についてご説明をしてきましたが、2002大会に出場、2004・2006両大会では審査員として大会に携わってきた望月シェフは自身のご経験を通じて”チョコレート・ボンボン”についてどのようなご感想をもたれているのでしょうか。 


『コンクール向けのボンボンを作るときに、まず最初に考えることは何ですか?』
−3種類を作るという規定の中で、まず考えるのはデザインや色使いなどそのテーマに合わせた外観です。
例えば、僕の出場した2002年大会のテーマは「サーカス」だったから、ちょっと派手目の色使いをするようにしました。また、2004年大会でチームJAPANが作ったものは全てをバール状に揃えていましたね。ああいったものは審査員が食べやすいし、3種が並んだときのテーマ性なども感じられて良かったと思います。
このように、ピエスのデザインに合わせたり、3種を並べたときのテーマ性を打ち出すことも当然考えなければなりません。
外観が大切と言うのは、審査員は全部を食べてくれるわけではありません。食べたいと思ってもらえるようなフォルムになるよう気をつけます。単に形だけではなくってツヤがなかったり、ブルームが出ていたり、見るからにコーティングが厚いものだったりと言うように、審査に値しないと思われると審査員は試食する量を加減してしまいます。まずは審査員が手にとって、ちゃんとテイスティングをしてもらえるように印象付けなければなりません。
そして、味。 
3種類の中に審査員が新鮮に感じる味や香りで「攻め」のものと、逆にクラシックなもの・基本的な「守り」のものをバランスよく取り入れること。どちらも審査員の心に印象を残せるものでなければなりません。1個につき1/3個ほどしか口にしない審査員に印象を深く与えるには、ひと口でもそのチョコレートボンボン全てのおいしさを伝えるような味の組み合わせやフィリングの硬さ、形など、様々なことを考えて3種のボンボンを作りあげていきます。



『店売りのボンボンとコンクール向けのものとで大きな違いはありますか?』
−店売りのものは、製造してから1週間ほどで食べるものから2ヶ月まで賞味期限を設けているものもあります。コンクールにおいては当日もしくは翌日に食べるため、うんとフレッシュなボンボンを作ることができます。日持ちや水分活性に神経質にならなくて大丈夫なので、柔らかいフィリングが使えます。フィリングの硬さや素材において、市販のものよりも冒険することが出来ますしね。例えば、柑橘系のフレッシュな香りは、コンクールならではのフレッシュなおいしさを表現出来るのではないでしょうか。
また、玄人である審査員が食べるわけですから一般に売る商品よりもお酒を多く使ったようなボンボンも出来るでしょうね。
ただ、コンクールでチョコレートボンボンを作るにあたっては時間に限りがありますから、どうしても冷凍を利用したり、寝かしたりする時間を十分にとれなかったりします。やはりチョコレートの場合は少し寝かしたほうが落ち着くというか、安定しますから、そういった時間をとらなくてもいいような作業方法やレシピを作ってを考えなければなりません。また、会場の環境が一定ではないコンクールですから、変化の多い条件や環境の中で対応が出来るような知識や技術・経験が重要です。
前回の大会でチームJAPANが作った“MANI”は、オーソドックスなボンボンだけど、あれは素晴らしかったと思います。柔らかすぎず硬すぎずというフィリングのおいしさに、ローストしたくるみのえぐみもうまく抑えて、香ばしさも素晴らしかった。 1/4食べただけでもかなりあのボンボンのおいしさを伝えることが出来てたんじゃないかな。コンクールの環境・時間内にあれだけのボンボンを仕上げたことはかなり審査員の評価も高かったと聞いています。



『ご自身がWPTCに出場したときに、もっとも苦労した点は?』
−メンバーに恵まれたので僕の場合は特に苦労はしませんでしたが、しいて言うなら金銭面かな。
2002年大会は、チームJAPANとして初めてWPTCの出場だったので、今の様にサポーター企業の方たちからの援助も有りませんでしたので、活動の為の予算は無く何とかやっていったという感じでしたね。
練習する場所なども限られていて、夜中にメンバーの厨房を借りて集まっての練習をしたり、材料を日本から送るとかなり輸送費もかかるので、WPTC大会事務局に手配をしてもらった材料を使うしかなかったり。
アメリカ ラスベガスっていう砂漠の真ん中での大会。もちろん日本と同じ状態の材料が手に入るということは難しい事です。実際、僕らもチョコレートの袋を開けてみたら真っ白で劣化してしまっていたり、フルーツピュレや粉類の品質が違っていたりと、個々の応用力を試される場面がたくさん用意されていました。
私たちの経験から問題点を抽出して、より良い環境でコンクールに挑戦して、そしてよい結果を残して行く為に帰りの飛行機の中で皆で相談をして、チームJAPANのサポートチームを作ろうと言う事になりました。もちろんいろんな苦労はあって当たり前ですが、「1回目よりは2回目」「2回目よりは3回目」と徐々にベターな環境で本戦に挑戦していってほしいと思います。



『さまざまなコンクールを通じて、チョコレート・ボンボンはどのように進化してきましたか?これからはどのように進化していくと思いますか?』
−食材が進化していく中で、特にチョコレート用の色素は多様化したように感じられます。少し前まではメタルの色素等はピエスに使われるくらいでしたが、最近ではボンボンやマカロンにも使われるようになってピエスとボンボンが近いものになってきました。 
ビジュアルの部分ではお菓子にはない形やツヤ・色使いでより洗練されたもの、無機質なものになってきているし、味の面では新しい組み合わせやレパートリーが広がり、冷凍技術が向上していくと同時にフレッシュでやわらかいフィリングのボンボンが増えてきました。
最近では、メディアなどでも“チョコレート・ボンボン”が大きく取り上げられたり、多くのコンクールで実績を残してきたショコラティエのボンボンを食べることが出来るようになって、消費者の方にも拘りの味を理解していただけるようになってきました。また、ボンボンはパッケージ商品として高単価なオリジナリティーのある、見た目にも化粧品やジュエリーと同等の価値観を持たせる事の出来るアイティムですから、お菓子とは別な産業とのコラボレーションに使う試みも見られるようになりました。





望月シェフのお話からも伺える通り、チョコレートはパティスリーのどんな仕事よりも科学的な計算が必要になると言えます。
チョコレートという繊細な素材を扱うために、わずか1℃の温度差を気にしながらの作業になるのも同じことで、ガナッシュの乳化とチョコレートの結晶化をしっかりと理解していないと、短時間で3種類の“チョコレート・ボンボン”を仕上げることはできません。
表面のクーベルチュールは薄ければ薄いほうが良いというのが一般的な考えですが、細かいシェフになるとそれぞれのフィリングに応じてクーベルチュールの厚みを調節してチョコレートの味を引き出すこともあるくらいなのですから。
そこまで行くと気温と湿度を感じて、0.1℃単位での作業になるはずです。
なれない会場で、一定しない気温と戦いながら、一粒のボンボンを作る選手の苦労は口では言い表せない状況なのです。


前回大会で日本のチョコレート・ボンボンはフランスに次ぐ2位に入っています。フランスチームは2003年度のMOFショコラティエ フランク・ケストネ氏が担当していましたが、彼と僅差で競り合ったことには大きな価値がありました。
今大会でも、チームJAPANをはじめとして世界各国のトップシェフがどのような“チョコレート・ボンボン”に挑んでくるか見ごたえあるものになるでしょう。








解説:WPTCJAPANオフィス 帝国ホテル東京 望月完次郎氏
文:WPTCJAPANオフィス 上村氏 
編集:株式会社アニー 山田


Posted at 15:00 | '08 WPTC2008とは? | この記事のURL

WPTC2008を徹底分析   ---lesson2・1---     2008年05月14日(水)

---lesson2・1---
ボンボンショコラ


2日間にわたって行われるWPTCは、多くの部門に分けて審査が行われます。
1日目の審査は各チームから1皿ずつ提出される皿盛りデザート。続く2日目 最初の審査の対象となるのはチョコレート・ボンボンです。

チョコレート・ボンボンには下記のようなルールが決められています。

----------------------------------------------------------
A.
ボンボンの外観は主としてチョコレートで覆われていなくてはならない。(最低75%はチョコレートで覆われていること。)

B.
各チームは下記に沿って、3種類のチョコレート・ボンボンを作ること。
a. 1種類は手で上掛けすること。
b. 1種類は型取りをすること。
c. 1種類はチョコレート以外のフィリングを使いつつ、最低75%のチョコレートで覆われていること。

----------------------------------------------------------



ルールにあるようにWPTCでは3種類の“チョコレート・ボンボン”をつくらなければなりません。

一般的に“チョコレート・ボンボン”とは、ガナッシュをクーベルチュールでコーティングしたものが基本になります。昨今のチョコレート技術の進化が功をなし 今ではたくさんの種類のチョコレートが作られており、用途やイメージに合わせて様々なものを作れるようになっています。

WPTCで作成するのは”上掛けするチョコレート・ボンボン”(B-a)と”型取りしたチョコレート・ボンボン”(B-b)。

”上掛けするチョコレート・ボンボン”というのは、一般的にはガナッシュを作り板状に流して固まったらカットし、それをテンパリングしたチョコレートに浸して全体を上掛けしたもので、「フランス式」と呼ばれます。一度に大量に仕込んでおくことで量産することができますが、シンプルな形になってしまいます。最近ではきれいな転写シートが数多く登場し、”上掛けしたチョコレート”に転写シートをおいてオリジナルの模様をつけるショコラティエも増えています。
転写シートのおかげで”上掛けするチョコレート・ボンボン”の可能性はかなり広がったといえるでしょう。
また、”型取りしたチョコレート・ボンボン”というのは、専用のプラスティックの型の内側ににテンパリングしたチョコレートを薄くコーティングし、中にガナッシュを絞り入れます。そこへもう一度チョコレートを流して蓋をして仕上げたもので、「ベルギー式」と呼ばれます。
型のバラエティーによって様々なデザインに仕上げることも容易ですし、綺麗なつやを出すこともできます。


これら2種の良い点を生かしながら、3種類の”チョコレート・ボンボン”をバランスよく作ることは大変難しく、選手達を悩ませるのですが、その理由は様々。

WPTCの味覚審査では各チームの作品が5分ずつ時間差で提出され、そのまま審査員に配られるのですが“チョコレート・ボンボン”のみ審査の方法が少し異なります。
審査員には目の前に各チームが作成した3種の“チョコレート・ボンボン”は一斉に並べられ、試食する順番などはすべて審査員の自由となります。
そういった状況の中で審査員に見た目・デザインで印象付けることは重要な条件のひとつとなるでしょう。

とはいえ、何より重要な条件はもちろん“味”に違いありません。
まずは、作成する3つの“チョコレート・ボンボン” の味が打ち消し合わないこと。そして、その3つすべてが各チームから提出された3種のボンボンを食べた後にもしっかりと記憶してもらえる味であること。 これらのことを念頭において作ることになります。

世界を狙うパティシエ達が作るチョコレートを使わないフィリングというのはとても興味深いものがあります。
ガナッシュにフルーツやお酒の味がついたものなどはシンプルな方で、中が2層や3層になっていたり、触感も昔とは比べ物にならないくらい多様化しています。
ルール(B−c)にあるような「チョコレート以外のフィリング」というのは昔からある”ウイスキーボンボン”などが代表的ですが、WPTCの審査においてはキャラメルやフルーツを使ったフィリングなどが想像される中、なにか新しい感覚のチョコレート・ボンボンを創作されることを審査員たちはおおいに期待しています。

前回日本チームが作成した“チョコレート・ボンボン”は、日本特有の果実・ゆずを使用した”GOFU”とシナモンの風味をつけたピスタチオのガナッシュにフイヤンティーヌを合わせた”UZU”・ソースのようにゆるいカラメルのフォンダンに、くるみのヌガーを組み合わせた”MANI” の3種でした。
“MANI”は味・食感ともに「王道」の組み合わせでありながら、普通の店売りでは見られない、これ以上ないコンクール向けのボンボンだったように思います。

                         



では、2002大会出場、2004・2006両大会では審査員としてWPTCに携わってきた望月シェフは自身のご経験を通じて”チョコレート・ボンボン”に対してどのようなご感想をもたれているのでしょうか。

(次回へ続く・・・)
Posted at 18:00 | '08 WPTC2008とは? | この記事のURL

WPTC2008を徹底分析   ---lesson1---     2008年04月18日(金)

---lesson1---
皿盛りデザート


WPTCで最初の試食に出されるのは皿盛デザートです。
1日目の最後に出される皿盛りデザートは、その後に続くすべてのお菓子に対するファーストインプレッションとなる大変重要な役割を担います。
WPTCの皿盛デザートには次のようなルールが決められています。



----------------------------------------------------------
A.
各チームは1種類14皿のデザートを作らなくてはならない。
  ・試食用 12皿
  ・写真用 1皿
  ・予備  1皿


B.
全ての皿盛デザートは1日目午後5:00から午後7:00の間に、主催者側にランダムに選択された順番で審査される。その時間までに、各チームはデザートすぐに提供できる状態に準備しなくてはならない。デザートについては、温かいもの、冷たいものなどの指定は一切ない。


C.
各皿盛のデザートはそれぞれひとつにまとまっていなくてはならない。ただし、その形については参加者の自由である。


D.
各チームは使用する皿を自分で持ち込まなくてはならない。主催者が皿を適用することは出来ない。


E.
各チームは全ての材料を計量した上で競技に持ち込まなくてはならないが、各材料を混ぜ合わせておくことは許可されない。各材料は別々の容器に一般的な名称(ブランド名ではなく、「チョコレート」のように)で目印をつけておくこと。材料についての更なる詳細は本大会規則20条H項を参照すること。


F.
各チームは皿盛デザートを作成するにあたり、すべての技術を審査員の面前にて公開しながら、作業を進めなくてはならない。


G.
皿盛デザートの構成はすべて参加者の選択に任せられる。なお、各デザートは下記基準に従って審査される。
  ・規定のサイズに収まっているか。
  ・外観とデコレーション
  ・カットした状態における内部の外観
  ・各構成部のそれぞれの味
  ・全体の風味の調和
  ・きめ細かさ
  ・味のバランス(例 甘味:酸味:苦味:塩味)
  ・難易度
----------------------------------------------------------



上記のようにいろいろと書いてありますが、ほかの味覚部門とは違ってこの皿盛デザートには規則がほとんどありません。あるのは「一皿に盛り付けられていること」くらいです。

アントルメやプティガトーとは違い“アラミニュット”ですぐに食べてもらえる皿盛デザートは、持ち運びや保存の必要がないのでパティシエの感性で自由な発想でレシピを作ることが出来ます。その為、新しい味や触感が常に求められる部門でもあります。
また、皿盛デザートならではの味わいとして、昔から“ショー・フロワ”という言葉が使われます。これは「暖かいものと冷たいものの組み合わせ」を現すフランス語。仕上げたらすぐに召し上がっていただくゆえに可能な表現方法といえます。



前回のチームJAPANは、温かいカラメルのシブーストに
マンゴーのシャーベットを合わせたデザートで勝負しました。
「ショー・フロワ」を絶妙のタイミングで審査員に提供した
チームJAPAN は高評価を得ることができました。 








      



では、審査員と言う立場でWPTCに関わってこられた加藤シェフは皿盛りデザートについてどのように感じてらしゃるのでしょうか。お話を伺いました。



『加藤シェフは実際にWPTCの審査を2001年から前回大会まで過去4回にわたり審査をされてこられたのですが、ご自身が皿盛デザートを作る際にはまず最初にどういったことを考えますか?』
―まず、「どういった状況でデザートを提供するか」ですよね。例えば、コンクールなのか、宴会やレストランなのか、サロン・ド・テなのか。そもそもデザートと言うものは宴会やレストランのように食事のあとに出すものでしょう。それをサロン・ド・テやコンクールのようにいきなりぱっと出てくるものでは、違った表現方法になりますよね。
そういったことを踏まえたうえで、「食材の味のバランス」や「ショー・フロワ」の要素を取り入れます。審査員に対してもお客様に対しても いかに「食べる人に期待感を持たせる」ことが出来るかが大切ですよね。




『「食べる人に期待感を持たせる」と言うのはどういったことですか?』
―食べる人の五感に訴えるものが「期待感」につながるのではないでしょうか。
食べる前にまず目で見て味を想像しますよね。その想像が期待感につながります。
次に見た目から生まれた想像を実際に口に入れたときの感じ方。「ショー・フロワ」のように冷たいとか熱いとかという温度から感じる「味」。そしてやっと素材の「味」・「旨み」・「香り」を感じます。最後に口に残る印象や「後味」も「味」と言うもののひとつになりますね。
それぞれの段階の中で感じる食材の味(「酸味」・「渋み」・「甘み」・「塩み」・「香り」)を組み合わせ方・バランスによって期待感をさらに期待感につなげることや満足感にできますよね。素材の特徴を生かして1枚の皿の上にまとめること。その「味」の見せ方や組み合わせにセンスが出ます。
五感で感じる感覚を表現すること、これが「食べる人に期待感を持たせる」ことなんですね。




『WPTCならびにその他国際コンクールで皿盛デザートを作る際に、絶対に忘れてはいけないことは?』
―先ほどお話をした「ショー・フロワ」を用いたとき、やはり温かいものから食べないと、そのデザートのいちばんおいしいところを感じることが出来なくなりますよね。作り手は食べる人にどういう順番で食べてもらいたいかを意思表示する必要があります。審査をする側も(お客様の場合も)いちばんおいしい状態を食べたいと思っているのですから。ただコンクールの場合は、審査する時点ではその指示や指定は出来ませんから、はじめにレシピを提出する際に提示しておくことは忘れてはいけないポイントのひとつと言えます。
こういったことと言うのは、コンクールで作る側の考え方だけでは、理解できません。
やはり、自分自身が他の人が作るデザートを食べてみたり、お客さまとしてデザートを感じることから大切なことが見えてきます。WPTCの審査員というのは、味覚の審査をする者と大会の作業中から技術等を審査するものに分かれています。味覚の審査をする者は、出来上がったものを食べるだけなんですよ。お客さんと同じ状態なんです。
食べる人の感じ方を知ることは何より、大切なことでしょうね。




『WPTCでの3回の審査を経て、皿盛デザートはどのように変化してきましたか?』
―いちばんはじめに審査したアメリカの国内予選(NPTC2001)なんてのに比べたら、ずいぶんかわりましたよね。
特にお皿はずいぶん変わってきましたね。直系24cmほどの白いお皿がほとんどで、地味でしたよ。WPTCになってからは皿の柄が変わってきたり、形の丸だけではなくて四角や楕円形のものも使われるようになりました。皿の素材も陶磁器だけではなくてガラス製のものなんかも出てきましたね。
審査の方もWPTC2002から味覚の担当と作業会場の担当で分けられるように変化しましたこれは、味覚の審査をする者は潜在意識を持たず、厳正に味だけを審査できるようにするためです。味覚の審査の中でも、2部門に分かれていますよ。これも厳正に味だけを審査するためです。































『これから皿盛デザートはどのように進化していくと思いますか?』
―そもそも「食べ物の進化」には新しい機材や素材の登場が深く関わっています。それに応じて作り手も進化していくことが出来ますね。こういった新しいものを発見できるように、いつもたくさん勉強しとかなくっちゃいけない。自分自身が新しいものを生かしていくことこそ進化なんじゃないですかね。
もともとは、料理の後に出てくるデザートだった皿盛りデザートが、コンクールなんかによってひと皿だけで魅せることが出来る(温度・見た目の美しさ・味覚・ボリューム等の点において)、満足感を出せる存在になったことも素晴らしい進化ですよね。今後はもっともっと皿盛りデザートと言う独立した存在が確立されていくんじゃないでしょうかね。そして、こうして進化させていくことはプロとしての使命感だと思っています。
                        






今回味覚を担当する和泉シェフは、2005年にパリで行われたコンクール「ワールド・チョコレート・マスターズ」の皿盛デザート部門で見事優勝しています。ナッシュビルでもその実力を発揮して、まずは第1品目の試食審査となる皿盛デザートで審査員に強烈なインパクトを与え、幸先の良いスタートを切ってもらいたいと思います。




解説:WPTCJAPANオフィス代表 二葉製菓学校 校長 加藤信氏
文:WPTCJAPANオフィス 上村氏 
編集:株式会社アニー 山田

Posted at 10:00 | '08 WPTC2008とは? | この記事のURL

WPTC2008を徹底分析   ---introduce---     2008年04月16日(水)

WPTC2008の開催まで、いよいよ5ヶ月をきり、チームJAPANのメンバーは本格的な練習をスタートさせました!


WPTC2008では過去の大会と同様、各国の代表3人で編成されるチームは2日間に渡って5種のお菓子の制作と3つのピエスモンテを作り上げます。


WPTC2008を知り、もっともっと楽しんでいただけるように・・・
〈皿盛デザート〉・〈ボンボンショコラ〉・〈アントルメ〉・〈アントルメグラッセ〉・〈プティガトー〉・〈パスティヤージュ〉・〈飴細工〉・〈チョコレートピエス〉の8部門についてご紹介していきます。

WPTC JAPANオフィスのシェフによる、ご自身が出場されたときの実体験や その後の大会を見て感じていらっしゃる思いなどを交えた貴重な解説もありますよ!!





   ---lesson1---
     皿盛デザート       解説:WPTCJAPANオフィス代表 加藤シェフ
   ---lesson2---
     ボンボンショコラ     解説:WPTC2002出場 望月シェフ
      第1回 ・ 第2回
   ---lesson3---
     アントルメ         解説:WPTC2002出場 喜島シェフ
   ---lesson4---
     アントルメグラッセ    解説:WPTC2004・WPTC2006出場 武藤シェフ
      第1回 ・ 第2回   
   ---lesson5---
     プティガトー        解説:WPTC2002出場 中島シェフ
   ---lesson6---
     パスティヤージュトレイ 解説:WPTC2006出場 林シェフ
   ---lesson7---
     飴細工           解説:WPTC2004出場 後藤シェフ
   ---lesson8---
     チョコレートピエス    解説:WPTC2004出場 朝田シェフ




以上、全8回の連載にてご紹介していきます。
Posted at 11:29 | '08 WPTC2008とは? | この記事のURL

WPTC2008とは?2007年05月29日(火)


 WPTC(World Pastry Team Championship)とは、2年に1度アメリカで開催されている製菓の国際コンクールです。
いわば、お菓子のワールドカップ!各国三人一組からなるチームで製菓技術を競います。2008年度で4回目を迎えます。歴史的にはまだまだ浅いコンクールですが、いまや、フランス リヨンで隔年開催されている“クープ・ド・モンド ドゥ ラ パティスリー”と並び洋菓子業界屈指のコンクールといえるでしょう。


 競技は2日間に渡り、計13時間行われます。
アメ細工部門、チョコレート細工部門に加え、アントルメ、プティガトー3種、アントルメグラッセ(冷菓)、アシェットデセール(皿盛りデザート)、チョコレートボンボン3種の計9種のガトーによる味覚部門が審査の対象となり、これらすべてを13時間と言う時間内に製作します。味覚部門において製作する種類が多いことからも分かるように、他コンクールに比べ、細工のデザイン性・技術よりも味覚部門にウエイトが置いて審査されるようです。


 しかしながら、その規定が多いことにも特徴のあるコンクールです。選手達は限られた時間の中、限られた材料と限られた道具を使用して、これらすべての作品を製作していかなければなりません。選手達にとって大変過酷な2日間、13時間になることは必至です。


 WPTCと言う大会の醍醐味のひとつともいえるのは、フランスのMOF(フランス最優秀職人賞)取得の菓子職人たちが出場できる唯一の大会と言うことではないでしょうか。通常、コンクールに出場できないMOF達とその技術を競い合えるコンクールとして世界のトップパティシエからも注目されています。






 主催  キャリーマックス社
 日時  2008年7月初旬予定
 場所  アメリカ合衆国 テネシー州  ナッシュビル
 テーマ ”イマジネーション”
 
 WPTC2008大会規則(PDF 125KB)





チームJAPAN マネージャー
 後藤順一氏 【グランドハイアット 東京】
チームJAPAN   
 キャプテン、アメ細工部門担当    川村英樹氏  【パティスリーアテスウエイ】
 チョコレート部門担当          藤田浩司氏  【(株)ヒロコーヒー ケーキ工房】 
 味覚部門担当              和泉光一氏  【サロン・ド・テ・スリジェ】    






代表
 加藤 信     【二葉製菓専門学校 校長】
事務局メンバー
 望月完次郎氏  【帝国ホテル】
 中島眞介氏   【ホテル ニューオータニ】
 喜島立也氏   【コンラッド 東京】 
 朝田晋平氏   【浦和ロイヤルパインズホテル】
 後藤順一氏   【グランドハイアット 東京】
 武藤修司氏   【ザ・リッツ・カールトン東京】
 和泉光一氏   【サロン・ド・テ・スリジェ】
 林正明氏     【氷川会館】
 川村英樹氏   【パティスリーアテスウエイ】
 藤田浩司氏   【(株)ヒロコーヒー ケーキ工房】
 上村究氏     【ドゥマール社日本駐在事務所】
 水野年純氏   【ミコヤ香商株式会社】






第1回 2002年 「サーカス」
 1位 アメリカ
 2位 フランス
 3位 ベルギー
 5位 日本   (望月完次郎氏、中島眞介氏、喜島立也氏) 
 ベストチョコレートピース  ベルギー
 ベストシュガーピース    日本
 ベストスポーツマンシップ  スイス


第2回 2004年 「水・大地・風・火」
 1位 アメリカ
 2位 ベルギー
 3位 フランス
 4位 日本   (朝田晋平氏、後藤順一氏、武藤修司氏)
 ベストチョコレートピース  ベルギー
 ベストシュガーピース    韓国
 ベストスポーツマンシップ  スイス


第3回 2006年 「陰&陽」
 1位 フランス
 2位 日本   (和泉光一氏、林正明氏、武藤修司氏)
 3位 アメリカ
 ベストチョコレートピース  日本
 ベストシュガーピース    フランス
 ベストスポーツマンシップ  メキシコ

Posted at 10:00 | '08 WPTC2008とは? | この記事のURL